国連を支える世界こども未来会議
国連を支える世界こども未来会議 in INAGI
2024.08.30
小学生がSDGsの観点から「住み続けられる未来の稲城市」をテーマにディスカッションを行う「国連を支える世界こども未来会議 in INAGI」が8月30日、稲城市地域振興プラザと稲城市議会 議場で開催された。稲城市内の12の小学校から各2名ずつの小学6年生が参加し、持続可能な都市づくりのアイデアを出し合った。
「国連を支える世界こども未来会議」は、2019年に東京オリンピック・パラリンピック公認プログラムとしてスタートしたBEYOND2020NEXT FORUMから創出されたもの。世界のこどもたちが集まり、SDGsを軸に平和で豊かな世界について語り合う「ピースコミュニケーション」の場として毎年開催している。2023年2月には国連本部より「The Children’s Conference of the Future in Support of United Nations」とタイトル認定されている。
これまで東京都内はもちろん、沖縄、浜松市、大阪でも開催。今回の「in INAGI」は稲城市、一般財団法人ピースコミュニケーション財団の共同主催により行われた。
稲城市の杉本真紀子教育長が挨拶(撮影・蔦野裕)
会議の冒頭、稲城市の杉本真紀子教育長が「みなさんは稲城で暮らし、そして稲城の学校で学んできて、今までにもSDGsを見据えながらのESDに取り組んでこられました。昨年の姉妹都市の北海道の大空町との交流活動ですとか、この夏、皆さんが参加してきたばかりの友好都市、長野県野沢温泉村での宿泊体験学習なども記憶に新しいところだと思います。そして地域の方々とさまざまな交流をしながら、また仲間といろいろなことを考え、話し合いながら、これからの稲城、そして社会はどうなったらいいかということを考えて取り組んでこられました。本日はそういった今までの学びや経験をもとにしながら、新たにお友達となるグループの仲間の人たちと絆を深めながら、考えを出し合いながら、これからの稲城をどういうふうにしていったらいいか、そのためには自分だったら何ができるかということを考え合って、素敵な企画を立ててください。そして第2部は稲城市議会の議場に場所を移します。市議会議員になったつもりで、皆さんのプレゼンテーションを力強く発表してください。皆さんがどんな計画を話してくださるか楽しみにしています。今日は未来の明るい稲城市を展望しながらみんなで楽しく話し合っていきましょう」などと挨拶。
コミュニケーションサポーターのサポートのもとワークショップ(撮影・蔦野裕)
会議は2部制で行われ、第1部では「住み続けられる未来の稲城市について考える」ワークショップが行われた。ここでは日本電信電話株式会社の渡邊淳司の進行のもと「心臓ピクニック」と「わたしたちのウェルビーイングカード」を用いながらの自己紹介からスタート。心臓ピクニックは聴診器を胸に当てると手に持った小型の箱が鼓動に同期して振動する装置で、緊張の度合いなどが可視化できるもの。カードはウェルビーイング=いきいきと生きるあり方や、心地よい状態=のための18の大事なことが書かれており、それを各々が提示することで互いに意思の疎通ができ共通理解が深まるというもの。
この自己紹介でコミュニケーションを深めたこどもたちはディスカッションをスタート。ここでは「住み続けられる未来の稲城市」のために大事だと思うことが書かれているカードを2枚選び、その理由を考えるという作業を行い、グループ内で発表。各々の意見を出し合った上でグループとして1枚のカードを選び、さらに議論を重ね、具体的なアイデアをブラッシュアップし、各々ができる行動を考えるといったところまでの作業を進めた。
優勝チームのプレゼンの模様(撮影・蔦野裕)
第2部では稲城市議会の議場に場所を移し、6つのグループが各々のアイデアを発表。発表の前に審査員を務める髙橋勝浩稲城市長と北浜けんいち市議会議長が挨拶。
プレゼンテーションでは「稲城らしさが大事。梨農家が減っているので、梨を守るために梨を人気にして梨農家を増やす」「ファミリー世代から高齢者が安心できることが大事。介護の紹介ポスターと市にアンケートを提案する」「思いやる心が大事。稲城の人たちで思いやりの機会を作る」「自然について話し合うことが大事。他の市の自然に関する取り組みを調べる」「自分らしさが大事。梨ロードを作る」「社会貢献と価値観の理解が大事。人と違いを発見した時にそれをポジティブにとらえる」といったさまざまなアイデアが発表された。
エイベックス株式会社 サスティナビリティ推進ユニット シニアアドバイザーの伊藤夢人氏がステージトーク(撮影・蔦野裕)
審査の間にはエンタテインメント企業として、持続可能な社会に貢献する新たな価値モデルを創造するために、「『無形の豊かさ』を創る、届ける」「『次世代』を創る、届ける」「『無形の豊かさ』と『次世代』を創るための土台となる組織づくり」の3つのマテリアリティを特定し、「未来の才能と、未知の感動への貢献」というサスティナビリティポリシーを掲げているエイベックス株式会社 サスティナビリティ推進ユニット シニアアドバイザーの伊藤夢人氏が「才能や夢を信じる力」の大切さを伝える出張型のキャリア教育プログラム「avex class」をはじめとするサスティナビリティな取り組みや、自身の経験をもとにしたステージトークを実施。
伊藤氏は「『持続可能な未来』を考える~自分ができることは何か??のヒントのために~」というテーマを掲げ、「持続可能性」と「SDGs」の基礎知識、持続可能な「まち」をどうつくるか? 企業による持続可能な社会への挑戦という3つの話を軸にトークを展開。世界の潮流としての「持続可能性」について「経済・社会・環境の三側面」の調和と説明。“人にやさしく” “地球にもやさしく” “「稼ぐ」という要素も”という3つのポイントを挙げ「SDGsは2030年で終わる。その後も続くような世界の持続可能性は人、地球、稼ぐ。このバランスを考えた活動をしていきましょうというのが2030年以降も続く骨太の持続可能性」などと訴えた。
また「人にやさしいは地球にやさしいにつながる。人にやさしいものを作る人は地球にもやさしいが、地球にやさしい人は人に厳しい傾向がある」などとウィットをまじえトークを展開。最後も自らが共感したという外務省の先輩で外交官だった故岡本行夫氏の死後に出された本の中から、岡本氏の「国際人として生きていく時に一番重要なのは『他人への優しさ』」という言葉を紹介した。
髙橋勝浩稲城市長が総括(撮影・蔦野裕)
この間に行われた審査では「価値観の理解・社会貢献が大事。人と違いを発見した時にそれをポジティブにとらえる」というアイデアを発表したグループが最優秀賞を獲得した。
審査結果については髙橋市長が「僅差で評価は難しかった。いずれのグループもSDGsの観点からは着眼点は良かった。そこで差がついたのは、一つはアイデアについての実現性。具体性で少し差がついたかなと思う。プレゼンテーションは皆さんはきはきと明瞭に活舌よくしていただいたが、活舌がいいだけではなく、さらに押しが強いというか、アイデアを伝えるうえでの説得力で少し差がついたかなと思う。いずれにしても大変すばらしいアイデアだった。そして持続可能な社会づくり、持続可能な稲城、皆さんもずっと稲城に住んで、次代の稲城の街を作る世代に育っていただければと思います」などと総括した。
最後にピースコミュニケーション財団の一木広治団代表理事が「この会議は東京23区では豊島区、品川区、北区で開催してきました。多摩では初めての開催。今、全国の自治体から開催したいという要望をいただいています。今はアルファ世代という言葉ができていて、まさに皆さんのような小学校4~6年生がそれにあたるんですが、皆さんに頑張ってもらって、将来の日本を元気にしてほしいという思いで行っていますので、みんなこれから勉強もありますが、自分の夢に向かって頑張っていってほしいなと思います」と挨拶し、この日の会議を締めくくった。
なおこの日、最優秀賞を受賞したグループには来年3月に都内で開催予定の「第5回国連を支える世界こども未来会議」と、8月の大阪・関西万博で開催する「国連を支える世界こども未来会議 FUTURE SUMMIT みらい総会」に参加することができる。
●WEB配信
●各チーム作成した発表シート