「地球のみんなが幸せになる未来のおかし」の審査会を開催しました
2024.07.16
小山薫堂氏が“空想のマーケット”「EARTH MART」をプロデュース
放送作家・脚本家で京都芸術大学副学長を務める小山薫堂氏がプロデュースする「EARTH MART」が「地球のみんなが幸せになる未来のおかし」の審査会を5月に開催した。
「EARTH MART」は2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)シグネチャーパビリオンで、食といのちの循環に触れ、未来へのヒントと出会う空想のマーケットがコンセプト。今年1月31日~5月20日に「国連を支える世界こども未来会議」を主宰する一般財団法人ピースコミュニケーション財団の共催で小学校4年生〜6年生の子どもたちから「地球のみんなが幸せになる未来のおかし」をテーマにアイデアスケッチを特設サイトにて募集。
審査員は服部幸應(学校法人服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長)、鎧塚俊彦(ToshiYoroizukaオーナーシェフ)、森本千絵(アートディレクター / クリエイティブ・ディレクター)、佐々木希(女優)、平野雄洋(江崎グリコ株式会社大阪・関西万博プロジェクトリーダー)の5氏。進行役は共催の一般財団法人ピースコミュニケーション財団の一木広治代表理事。
事前に審査員に応募作を渡し、それぞれ30作品を選んだうえで、審査会では活発なディスカッションが行われた。
冒頭、プロデューサーの小山氏が「大阪・関西万博でパビリオンを一つ任されていますが、今回の万博は『いのち輝く未来社会のデザイン』というのが全体のテーマです。この『いのち』を8人のプロデューサーがそれぞれの視点で考え、見つめることになっています。僕は食を通して“いのちって何だろう?”“いのちをつむぐ”ってどういうことなんだろうということを来場者の方に感じていただくことを目指して、「EARTH MART」という空想のスーパーマーケットをモチーフにしたパビリオンを企画しています。展示の前半が『いのちの売り場』。人は八十数年間生きる間にどれくらいの命をいただきながら、自分の一つの命を守るのだろうか?そうしたことに向き合うことによって食への感謝や、地球の循環への理解を深めようというものです。
後半は『みらいの売り場』。ここでは、日本が育んできた伝統、文化、テクノロジー、さまざまな視点から未来に残したい「食べ方」のヒントを散りばめていきます。お菓子はその中の一つのテーマになっています。お菓子というものは生きるために食べるものではないですが、人の幸せや夢を象徴する食べ物だと思っています。それを子どもの視点で考えた時に、現実的な商品開発というより“この視点は本当に未来に必要なものだな”“他の国ではこういう考え方をするんだ”など、見過ごしていた、見失っていた幸せの形みたいなものに気づき、心の満腹につながればいいなと考えています。それを審査員の皆さんの視点で推薦していただき、これらのイラストはこのまま展示しながら、いくつかを商品のように展示できたらいいなと。実現性のあるなしというより、社会を見つめる視点として、お菓子の在り方を推薦していただければうれしいです」などとパビリオンと今回の募集の意図を改めて説明。
服部氏は「お菓子作りを経験している者からしたら、作る時は1グラムの材料で味がまったく変わる。子どもたちはそれをどこまで分かっているかといえば、きっと分かっていないと思う。その分かっていない部分を我々が、逆に彼らの気持ちを考えたうえで作り上げる、模索してあげることが望ましいんだろうなと(思った)。子どもたちから見れば“それは私が考えたものじゃない”と言われるかもしれないが、それでも我々は何らかの形で協力したいと思いながら作品を見ていました」などと作り手の側の視点も交えながらの選考であったことを明かした。
鎧塚氏は「ドラえもんのような発想のものもたくさんあった。あと、中国の人が多かったように思う。社会的な問題に取り組んでいる方などもいましたね。子どもらしい発想で、大きいキャンディーがほしい!などそのままのメッセージもありました。そういうたくさんのアイデアの中で今回選ぶのは難しかったですね」とさまざまな表現方法が入り混じる中での選考の難しさを口にした。
【佐々木さんは2児の母としての視点もまじえてコメント(撮影・蔦野裕)〈ヘアメイク:犬木愛(agee) 衣装:iNtimité(ジャケット:Fringe Sleeveless Jacket/パンツ:Fringe Pants)〉】
佐々木さんは「2児の母をしているのですが、お休みの日には長男の“ママ、お菓子を作ろう”という一声で一緒にお菓子作りをしています。子どもにとってお菓子は大事なもので、心を豊かにするんだなと思いながらいつも作っています。今回の子どもたちのアイデアを見て、絶対に大人では考えられないようなアイデアがたくさん詰まっているなと感じました。そして小学生ながらに環境のことを考えていたり、“元気じゃない子を明るくする”というような前向きなメッセージなどが書かれていたり、すごく胸に突き刺さりました。こういった子どもたちのアイデアを大人たちが実現できれば素晴らしいことだなと思いました」などと母親の視点で子どもたちのアイデアに感動。
森本さんは「応募作をどれも面白く拝見しました。私も1児の母ではありますが、お菓子を前にすると母というよりは永遠に子どもになってしまうというか(笑)。理屈ではなく心が躍る、ワクワクする。小山さんの“心が満腹になる”という言葉はすごく素敵だなと思いました。生きるために直接的に必要があることではないですが、こういう存在が私たちの希望になる感じがしています。現実的というより、世界に向けて発表できるこの機会に思い切り自由に夢を描いてくれている作品を応援したいなと思っています」と子どもたちの自由な発想に心を躍らされた様子。
平野氏は「今回は日本だけではなく海外からも応募がたくさんあり、ワクワク しながら見させていただいた。子どもたちのアイデアを見ながら、お菓子は楽しい、うれしいという前向きな気持ちになれるものであり、誰かと一緒に食べるとその時間がより楽しくなったり、よりおいしくなったり、仲良くなったりできる不思議な力を持った食べ物だと改めて感じた。そのような観点を大事にして審査をさせていただきたい」とお菓子メーカーならではの言葉を述べた。
今回は国内から199通、海外から193通の作品が集まった。審査では「製品にできそう」「形にするのは難しいが発想が斬新」「食べられないが、展示物として面白い」「子どもらしくてかわいい」「とにかく不思議」「大人にはできない発想」などとさまざまな視点でのコメントが飛び交った。
最後に小山氏は「見ているだけでこちらも幸せになり、お菓子を通して幸せを考えるといういい機会になった。この審査を通して思ったことを来場者の方にも伝えたい」と語った。